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本文: 外国知的財産制度に関する調査研究報告 | 経済産業省 特許庁

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平成24年度産業財産権制度各国比較事調査研究等事業報告書

各国における意匠の表現に関する調査研究

報告書

平成

25

2

(2)
(3)

はじめに

現状の国際情勢を鑑みた我が国の意匠制度の利便性向上のため、出願に係る図面提 出要件および適切な意匠の表現の在り方について、産業構造審議会意匠制度小委員会 等において検討がおこなわれている。このため、平成24年度産業財産権制度各国調 査研究事業「各国における意匠の表現に関する調査研究」は、広く意匠の表現に関す る調査研究を行い、望ましい制度、とりわけ意匠の表現についての制度・運用を検討 するための資料を提供するものである。

また、我が国が「意匠の国際登録に関するハーグ協定のジュネーブ改正協定」(ハ ーグ協定ジュネーブアクト)に加入することについても検討がなされており、現在の 国際的制度に対して、国際調和を図る観点からもより望ましい制度を実現させるため の施策作りが必要とされていることに加えて、国際的な場において我が国の立場を明 確にしていくためにも、現状の国内意匠制度利用者の意匠の表現に関する評価・要望 を把握することは極めて重要である。本調査研究は、海外の意匠の表現について実態 を踏まえた調査を行うとともに、上述の観点から国内意匠制度利用者の声を広く収集 することによって、これらに資する資料を提供することを目的とするものである。

本報告書をまとめるにあたり、ご指導、ご協力を頂いたワーキンググループの方々 をはじめ、海外アンケート及びヒアリング調査にご協力いただいた諸外国法律事務所、 国内アンケート及びヒアリング調査にご協力いただいた国内の企業・特許事務所、特 許庁の方々に厚く御礼申し上げる。

平成25年2月

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調査にあたっては当該分野に精通した弁理士によるワーキンググループを編成し た。ワーキングループメンバーの弁理士、オブザーバーの方々及び事務局は以下の通 りである。

ワーキンググループメンバー

座 長 植村 昭三 青山特許事務所 副会長 兼 東京事務所 所長 弁理士 副座長 青木 博通 ユアサハラ法律特許事務所 パートナー 弁理士

恩田 誠 オンダ国際特許事務所 所長 弁理士 木戸 良彦 木戸特許事務所 弁理士

鈴木 博子 中村合同特許法律事務所 弁理士

中川 裕幸 特許業務法人 中川国際特許事務 所長 弁理士 中村 知公 小西・中村特許事務所 弁理士

松本 尚子 特許業務法人 三枝国際特許事務所 弁理士 森本 聡二 久遠特許事務所 弁理士

オブザーバー

山田 繁和 特許庁審査業務部意匠課意匠制度企画室 室長 加藤 真珠 特許庁審査業務部意匠課意匠制度企画室 課長補佐 石坂 陽子 特許庁審査業務部意匠課意匠制度企画室 課長補佐

事務局

水野みな子 青和特許法律事務所 パートナー 弁理士

岩本東志之 一般社団法人 日本国際知的財産保護協会 主任研究員 澁谷 浩司 一般社団法人 日本国際知的財産保護協会 主任研究員 山田 邦博 一般社団法人 日本国際知的財産保護協会 企画調整課長 川上 溢喜 一般社団法人 日本国際知的財産保護協会 国際法制研究室長

ワーキンググループ会議の開催は以下の通りである。

第1回会議 平成24年6月12日 調査研究の内容共有、役割分担確認

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はじめに ワーキンググループ、オブザーバー、事務局紹介 目 次

第Ⅰ部 調査研究の概要……… 1

第Ⅱ部 各国おける意匠の表現に関する制度・運用調査……… 9

中国……… 11

アメリカ合衆国……… 31

欧州共同体商標意匠庁(OHIM)……… 43

韓国……… 63

台湾……… 83

香港……… 91

インド……… 101

ロシア……… 109

ブラジル……… 135

オーストラリア……… 145

南アフリカ共和国……… 155

トルコ……… 161

ニュージーランド……… 169

アラブ首長国連邦(UAE)……… 179

フランス……… 185

第Ⅲ部 海外アンケート調査‥‥…‥…‥………‥‥……‥…………‥… 191

海外アンケート調査の目的と手法………‥ 193

海外アンケート調査の結果(一覧表及び別添資料)……‥…………‥ 195

第Ⅳ部 海外ヒアリング調査……… 211

海外ヒアリング調査の目的と手法………‥……… 213

海外ヒアリング調査の結果……… 215

第Ⅴ部 国内アンケート調査……… 287

国内アンケート調査の目的と手法……… 289

国内アンケート調査の結果……… 287

第Ⅵ部 国内ヒアリング調査……… 361

国内ヒアリング調査の目的と手法………‥……… 363

国内ヒアリング調査の結果……… 366 第Ⅶ部 我が国の意匠の表現に関する課題と今後の取組みについての考察

411

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1

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3 第I部 調査研究の概要

1.調査研究の目的

産業財産権制度を経済・社会の変化、特に国際化の急速な進展に適応させるために、 一歩先を予測して制度に影響を与えると考えられる諸問題を取り上げ、これに関する 世界の主要各国・地域の現状と動向を調査し、併せて、現在の世界の制度に対して、 国際調和の観点からより望ましい制度を実現させるための施策作りの資料とするこ とを目的とする。

意匠の表現1を巡る国際情勢として、WIPO商標・意匠及び地理的表示の法律に関す る常設委員会(SCT)において、意匠法条約草案に関する検討が進められており、平成 23年10月24日から28日に開催された第26回委員会においては、出願意匠の開示 に十分な図の数の判断は出願人に任される方向で議論が進められており、願書記載要 件についても議論がされているところである。また、近年中の外交会議開催の可能性 が議論されている。

また、第13回(平成23年2月4日)及び第14回(平成23年12月20日)産業構造審 議会知的財産政策部会意匠制度小委員会においても、諸外国と異なる我が国の厳格な 図面提出要件による出願人の手続負担2が指摘され、デザイン保護における利便性の 向上のため、我が国における図面提出要件の緩和及び多様化の必要性が指摘されてお り、今後、意匠の特定の考え方及び補正の要件の在り方についても併せて検討されて いる。

前述のとおり、現状の国際情勢を鑑み、我が国出願人の利便性向上のためには、出 願に係る図面提出要件など、我が国における適切な意匠の表現の在り方について、早 急に検討を行う必要がある。

特に、意匠出願において、意匠の表現は、出願意匠の要旨及び意匠権の客体を担う ものであり、意匠の要旨の認定、類否判断、類似範囲、許容される補正の範囲にも影 響が及ぶ可能性のあるものである。手続負担軽減と国際調和の観点から意匠の表現に 関する要件緩和及び多様化の要望がある一方、図面の提出要件を緩和することによっ て権利内容が不明確になり、権利内容や権利行使に影響が出ることを懸念する声もあ る。

そこで、ユーザーの手続負担と利便性向上及び国際調和を踏まえつつ、我が国の意 匠登録出願における適切な意匠の表現について検討をするための一助とするため、諸 外国の意匠出願における意匠の表現に関する要件について情報収集し、さらに現状利 用されている多様なデザインの表現方法及び各国及び日本の意匠の表現についての ユーザーの評価・要望等の情報を収集する。

1 図面及び図面に関する願書の記載をいう。 2

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4 2.調査の項目及び方法

2.1 第II部 各国おける意匠の表現に関する制度・運用調査

次の15の国・地域について書籍・文献・インターネットを利用して各国の法律、 規則、基準、ガイドライン、登録例等を情報収集し報告書にまとめた。また、報告書 をまとめるに当たっては第III部海外アンケート調査結果も活用した。各国・地域ごと の報告書の作成はワーキンググループの弁理士が担当した。また、英語の文献につい ては、意匠の表現に関する部分のみ日本語に翻訳し、日本語・英語以外の文献につい ては、全文日本語に翻訳した3。

1 中国

2 アメリカ合衆国

3 欧州共同体商標意匠庁(OHIM) 4 大韓民国(以下、「韓国」という。)

5 台湾

6 香港

7 インド

8 ロシア

9 ブラジル

10 オーストラリア

11 南アフリカ共和国(以下、「南アフリカ」という。)

12 トルコ

13 ニュージーランド

14 アラブ首長国連邦(UAE)

15 フランス

調査内容は次の意匠に関する制度・運用である。 ① 制度概要

・意匠制度の枠組 (例えば、実体審査の有無、部分意匠制度の有無) ② 意匠の保護客体

・意匠の定義 ・保護対象 ・保護要件 ③ 意匠の開示方法

・提出書面等の内容、記載項目

・許容される意匠の表現形式 (例えば、図面・写真・ひな形、データ形式、料金 等)

・許容される意匠の表現方法(例えば、図の数、大きさ、図法、図の種類、色彩、

(11)

5

陰影、線種、マネキン等の映り込みの可否等) ④ 意匠の表現に関する願書記載事項

・意匠の表現に関する願書記載事項 (例えば物品名、クレーム、意匠の説明等) ⑤ 意匠の特定・認定・補正の考え方

・意匠の十分な開示要件 (例えば出願日確保の要件、記載不備の場合の対応、十 分な図の数、意匠を開示する範囲、権利請求範囲の特定方法等)

・意匠の認定・補正の要件 (例えば要旨認定、許容される補正・分割・変更の範 囲等)

⑥ 単一性の考え方

・一出願と認められる範囲 (例えば、部品と完成品、同一物品、同一分類、類似 するもののみ等)

・一意匠と認められる範囲 (例えば実施態様、組物、動く意匠等) ・分割要件

⑦ 意匠権

・意匠権の効力範囲 (意匠の開示内容や単一性の考え方と効力範囲の関係等) ・権利行使の制限事項、無効事由

各国・地域の執筆担当弁理士は次の通りである。

担当弁理士 執筆担当国・地域

恩田 誠 弁理士 南アフリカ、トルコ 木戸 良彦 弁理士 台湾、インド

鈴木 博子 弁理士 韓国、ブラジル

中川 裕幸 弁理士 オーストラリア、ニュージーランド 中村 知公 弁理士 ロシア、アラブ首長国連邦

松本 尚子 弁理士 中国、香港

森本 聡二 弁理士 アメリカ合衆国、フランス

水野みな子 弁理士 欧州共同体商標意匠庁(OHIM)

2.2 第III部 海外アンケート調査

調査対象15か国・地域の法律事務所へ当該国・地域の意匠制度及び運用に関する 英文アンケート票を送付して回答を得た。回答結果は各国・地域の状況を一覧して俯 瞰できるようにするために、質問項目ごとに一覧表に各国・地域の回答を整理した。 回答に当たっては次の事務所の協力を得た。なお、欧州共同体商標意匠庁(OHIM) に関しては直接当該官庁にアンケート票を送付し回答を得た。

1 中国 北京林達劉知識産権代理事務所

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6 3 欧州共同体商標意匠庁(OHIM) 同左

4 韓国 Kim & Chang

5 台湾 UPSC聯合專利商標事務所

6 香港 Deacons

7 インド Kan & Krishme

8 ロシア Gorodidissky & Partners

9 ブラジル Kasznar Leonardos

10 オーストラリア Shelston IP

11 南アフリカ Dr Gerntholtz Inc

12 トルコ Destenk Patent Inc

13 ニュージーランド Shelston IP 14 アラブ首長国連邦(UAE) Rouse& Co

15 フランス Beau de Lomenie

2.3 第IV部 海外ヒアリング調査

仕様書指定の4か国・地域(中国、アメリカ合衆国、欧州共同体商標意匠庁、韓国) と選定国としてインド、ブラジル、トルコの合計7か国・地域を対象にヒアリング調 査を実施した。本調査は「2.2 第III部 海外アンケート調査」の結果を受けて、 制度・運用に関してさらに詳細に情報を把握する必要のある項目について、対象国・ 地域の弁護士に直接知的担当官庁へ訪問して聞き取り調査を行ってもらい回答を得 た4。調査の継続性から「2.2 海外アンケート調査」で協力を得た法律事務所へ 依頼したが、アメリカ合衆国については、Sughrue Mion, PLLCの弁護士に依頼した。 得られた回答は質問ごとに取りまとめたが、中国については、ヒアリング回答に対し てさらに確認質問を行うことによって情報の正確さを向上させた。

2.4 第V部 国内アンケート調査

国際的に意匠制度を利用している国内の意匠制度利用者(主に企業)約1000者及 び弁理士事務所・個人弁理士100者の計約1100者にアンケート票を送付して、回答 を得た。アンケートは原則、アンケート冊子を送付してその冊子に直接回答を記入す る方法によったが、希望者には電子ファイルを送付して回答の記入されたファイルを 返信してもらった。アンケートの項目は二部形式とし、第一部では、主に国際意匠登 録出願から我が国意匠制度では認められていない表現例を抽出して提示し、その表現 で意匠が権利行使できる程度に特定されるか、されないと考える場合はどのようにす れば特定できるかを質問した。第二部では海外に意匠出願をした場合の不利益、例え

4欧州共同体商標意匠庁については、当該官庁に直接ヒアリング票を送付し回答を得た。中国については訪問代理

(13)

7

ば複数種類の図面を作成しなければならなかった場合はあるか等、主に外国意匠制度 と我が国意匠制度における意匠の表現の相違に基づく課題や、現状デザイン・設計の 現場において用いられているデザインの表現や手法(作成手法やフォーマットを含 む)と意匠出願図面の乖離についての実態や、意匠登録出願における意匠の表現の表 現手段としてのニーズについて質問をした。得られた回答は質問ごとに統計整理し、 解析を行った。

2.5 第VI 国内ヒアリング調査

「2.4 第V部 国内アンケート調査」で回答を得た440者の中から20者を選 定し、その20者を直接訪問してヒアリング調査を実施した。ヒアリング項目は、「2. 4 第V部 国内アンケート調査」の調査結果を受けてさらに詳細に調査する必要の ある課題や業界ごとに特有の課題を設定した。訪問に当たっては事前にヒアリング票 を送付した上で訪問して回答を得た。得られた回答は、質問ごとに整理しとりまとめ た。

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中 国

松本尚子 *

1 意匠制度

1.1 意匠制度の枠組み

中国では、「意匠」を「外観設計」という。日本の特許法にあたる「中華人民共和国専 利法」(以下、「特許法」という。)第 2 条では「本法でいう発明創造とは発明専利、実用 新型専利、外観設計を指す。」と規定されており、外観設計(以降、「意匠」という。)は特 許法で保護される。特許法は、2009年10月1日から第3次改正法が施行されている。

意匠は、出願後に予備審査(以降、「方式審査」という。)のみが行われ、新規性や創作 性の判断などの実体審査は行われない(特許法第40条)。国務院特許行政部門では、意匠 審査部が設けられており、約200名の審査官が意匠の認定やフォーマリティチェックなど の方式審査を行う。

また、中国は国際意匠分類(ロカルノ分類)を採用しており、外観設計(意匠)審査部 において分類が付与される。付与された分類が同一となる分類内の物品はすべて類似物品 とされる。

1.2 部分意匠制度など意匠特有の制度 1.2.1 多意匠一出願

原則として、1件の意匠出願に含まれる意匠の数は1つとされているが、例外的に、① 同一製品における二つ以上の類似意匠、②同一種類でかつセットで販売又は使用する製品 の二つ以上の意匠(以降、「組物の意匠」という。)は、1件の出願とすることができる(特 許法31条2項)。

(1)類似意匠とは

中国において類似意匠として出願する場合、1件の出願における各意匠は同一製品に 係る意匠でなければならない。たとえば、各意匠がそれぞれ、食事皿や取り皿、コップ、 茶碗の意匠である場合、全部が食事皿の意匠であって意匠分類上の同一大分類に該当す るが、これらは同一製品とはいえない(審査指南第1部分第3章9.1.1)。

類似意匠として出願する場合は、願書の「簡単な説明」の項目において、基本意匠を 特定する必要があり、その他の意匠は基本意匠と類似しなければならない(実施細則35 条第1項)。また、1件の出願における類似意匠の数は10を超えてはならない(実施細 則35条第1項)。類似意匠かどうかを判断する際には、基本意匠と他の意匠とが単独に 比較される。方式審査では、類似意匠に係る出願について、特許法第31条2項で規定 される事項に明らかに適合しないものか否かの審査がなされる。一般的に、全体観察を 経て、その他の意匠と基本意匠とが、同一又は類似した設計特徴を備えており、かつ両 者間の相違が局部における細かな変化、当該種別の製品の常用設計、設計ユニットの並 びの繰り返し又は単なる色彩要素の変化などにある場合、通常両者は類似する意匠であ ると考えられる(審査指南第1部分第3章9.1.2)。

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なお、復審においては、審査指南第4部分第5章5.1.1に意匠の同一の考えにつき、 製品名および国際意匠分類が同一であるか否かの他、販売時のラックの販売位置が参考 とされる旨が記載されている。

(2)組物の意匠

中国でいう組物の意匠とは、それぞれの製品が分類表中の同一大分類に属し、慣習上 同時に販売又は同時に使用し、かつ各製品の意匠に同じ設計思想をもつことをいう(実 施細則35条第2項)。

(a) セットで販売又は使用する製品

中国において「セットで販売又は使用する製品」とは、2 件以上の同一大分類に属 し、各自で独立している製品によって構成されてり、各製品の設計発想が同一である ものの、うち一製品に独立した使用価値を持っており、そして各製品を組合せると、 その組合せ後の使用価値が現れるような製品を指す。例えば、コーヒーカップ、コー ヒーポット、ミルクポットとシュガーポットによって構成されるコーヒー器具等が挙 げられる(審査指南第1部分第3章9.2)。

(b) セットで販売又は使用

習慣上では同時に販売又は同時に使用し、かつ組み合わせ後の使用価値を持つこと をいう(審査指南第1部分第3章9.2.2)。

同時販売

中国において同時販売とは、意匠に係る製品が習慣上では同時に販売されるもの をいう。例えば、ベッドカバー、シーツ、枕カバーなどにより構成されるベッド用 品等が挙げられる。販促のために適宜セットにして売り出される製品の場合、習慣 上での同時販売と見なされず、セット製品として出願することはできない。例えば、 ランドセルとペンケースに関し、ランドセルを購入した際にペンケースが景品にな るような場合である。

同時使用

中国において同時使用とは、製品が習慣上同時に使用されることをいう。つまり、 そのうちの一つの製品を使用していると、使用上で連想を起こし、別の一つあるい は複数の製品の存在に思いつくことであって、これらの製品を同時に使用するとい うことではない。例えば、コーヒー器具のうち、コーヒーカップ、コーヒーポット、 シュガーポット、ミルクポット等が挙げられる。

(c) 設計思想の同一

設計思想が同一であるかは、各製品の設計スタイルが統一されていることを指し、 各製品の形状、図案又はその組合せ、並びに色彩及び形状、図案の組合せについて作 成された設計が統一されていることをいう(審査指南第1部分第3章9.2.3)。 形状の統一

形状の統一とは、個々の対象構成製品のいずれも同一の特定の造形を特徴とする、 若しくは個々の対象構成製品が特定の造形によって組合せの関係を成す場合、形状統 一の要件に合致する。

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図案の統一とは、各製品上の図案設計のモチーフ、構図、表現方式などにおいて統 一されていることをいう。その一つでも違っていると、図案の不統一と判断される。 例えば、コーヒーポットの設計が蘭の花の図案をモチーフし、一方でコーヒーカッ プの設計の図案がパンダになっている場合、図案として選ばれたモチーフが異なるこ とから、図案の不統一となり、統一・調和の原則に合致しないと判断されるため、セ ット製品として併合出願することができない。

色彩の統一

色彩の統一とは、個別に考慮せず、各製品の形状や図案と共に統合的に考慮される。 各製品の形状、図案が統一・調和の原則に合致している場合、簡単な説明において色 彩の保護を要求すると明記していなければ、設計思想が同一になる。簡単な説明にお いて色彩の保護を要求すると明記している場合、製品の色彩のスタイルが統一されて いれば、設計思想が同一になる。各製品における色彩の変化が大きく、全体の調和性 を損ねている場合は、セット製品として併合出願することはできない。

なお、セット製品の意匠出願に、一つ又は複数の製品の類似意匠を含めてはならない(審

査指南第1部分第3章9.2.4)。例えば、食事用のコップと取り皿を含めたセット製品の意

匠出願には、前記コップと取り皿の2つ以上の類似意匠を含めてはならない。

1.2.2 その他の特有の制度

中国では、部分意匠制度、早期審査制度はない。

1.3 出願変更制度の有無

中国には、意匠出願から特許出願あるいは実用新案登録出願への出願変更、またその逆 ができる出願変更制度はない。

2.意匠の保護客体

2.1 意匠の定義

意匠とは、「製品の形状、図案又はその結合及び色彩と形状、図案の結合に対して行わ れ、優れた外観を備え、かつ工業への応用に適した新たな設計」を指す。(特許法第 2 条 第4項)。

(1)製品の意匠

「意匠は製品の意匠であるため、その対象は製品でなければならない。繰り返した生 産ができない手細工の品、農産物、畜産物、自然物は意匠の対象にしてはならない。」 としている(審査指南第1部分第3章7.1)。

(2)製品の形状、図案又はその組合せ並びに色彩と形状、図案との組合せ

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は除かれる。意匠を構成し得る組合せとして、製品の形状、製品の図案、製品の形状と 図案、製品の形状と色彩、製品の図案と色彩、製品の形状、図案と色彩が含まれる(審 査指南第1部分第3章7.2)。

(a) 形状とは、製品の造型についての設計を指す。つまり、製品外部の点、線、面の移 動、変化、組合せによって表現する外部輪郭であり、即ち、製品の構造、外形など について同時に設計、製造を行った結果である。

(b) 図案とは、あらゆる線、文字、符号、カラーブロックの配列や組合せにより、製品 の表面になされた図形をいう。図案は、製図又はその他創作者の図案設計の構想を 具現する手段により制作しても良い。製品の図案は固定しており、目に見えるもの でなければならない。あったり、なかったり、又は特定な条件に限って見えるもの であってはならない。

(c) 色彩とは、製品に使われる色又は色の組合せを指す。当該製品の製造に使われる材 料の元の色は意匠の色彩にあたらない。

2.2 保護対象

「有体物(不動産を含む)」のほか、「建築物」「包装ラッピング」1「布としてのテキス タイル」は意匠の保護対象になる2

審査指南第1部分第3章7.4より、以下に該当するものは保護されない。

(a) 特定の地理的条件よって決まるもので、繰り返して再現することのできない固定し た建物、橋など。例えば、特定の山、河川を含む山水別荘。

(b) 気体、液体及び粉末状など固定した形状のない物質を含めているため、形状、図案、 色彩などが固定しない製品。

(c) 分割できない又は単独では販売できない、そして単独では使用できない製品の局部 の設計。例えば、靴下のかかと、ブリム、コップの取手など。

(d) 異なった特定な形状又は図案を有する複数の部材で組み合わせた製品の場合におけ る、単独で販売かつ使用ができない構成部材。例えば、形状の異なった嵌めパーツ からなる嵌め絵は、すべての嵌めパーツを一件の意匠として出願する場合に限って、 保護対象に該当する。

(e) 視覚に働くことがない又は肉眼では確認しにくく、特定な工具を使わないとその形 状、図案、色彩を見分けられないような製品。例えば、紫外線ランプで照射されな いと図案が現れない製品など。

(f) 保護を求める意匠が製品そのもの通常の形態ではない場合。例えばハンカチを動物の 形にした意匠など。

(g) 自然物の元来の形状、図案、色彩を主体とするもの。通常は、2つの状況をいい、一 つは自然物そのもの、もう一つは自然物のシミュレーションからなるものである。 (h) 単なる美術、書道、撮影などのカテゴリーに属する作品。

(i) その製品の所属する分野では見慣れている幾何形状及び図案からなる意匠。

1 第III部海外アンケート調査では「包装ラッピング」を「Packaging」と訳して質問をしたため「包装用容器」と解して 回答がなされた。よって、ここでの「包装ラッピング」は「包装用容器」を指すものと解される。

2

(21)

(j) 文字、数字の発音、意味。

(k) 製品に電気を入れた後で顕示する図案。例えば、デジタル時計のディスプレイで表 示される図案、携帯電話のディスプレイで表示された図案、ソフトウェアのインタ ーフェースなど。

上記のほか、平面印刷物の図案、色彩又は両者の組み合わせによって作成され、主に表 示を機能とする意匠(設計)は保護されない(特許法第25条第1項第6号)。

2.3 保護要件

(1)工業への応用に適していること(特許法第2条第4項)

工業への応用に適するとは、「産業上で応用し、ロット生産を成すことができるもの」 をいう(審査指南第1部分第3章7.3)。

(2)既存の設計に属さないもの(新規性)(特許法第23条第1項)

特許法第23条第1項では、「特許権を付与する意匠は、既存の設計に属さないものと する。また、いかなる部門又は個人も同様の意匠について、出願日以前に国務院専利行 政部門に出願しておらず、かつ出願日以降に公開された特許文書において記載されてい ないこととする。」と定められている。「既存の設計」とは、出願日以前に国内外におい て公然知られた設計を指す(特許法第23条第4項)。

方式審査では、特許法第23条第1 項の要件について通常検索は行われず、審査官は ただ出願書類の内容及び一般消費者の常識から、保護を求める意匠出願が同項の規定に 明らかに合致していないか否かを判断するだけでよい(審査指南第1部分第3章8)。た だし、検索を経ずに獲得した既存の意匠又は抵触出願に関する情報に基づいて、審査官 は、出願意匠が同項に明らかに合致していないか否かを判断することができる。明らか に既存の意匠を剽窃した出願や、明らかに内容が実質的に同一である出願などについて、 検索により取得した引例文献、その他のルートにより取得した情報に基づいて、審査官 は当該意匠が同項の規定に明らかに合致していないか否かを判断する。

(3)創作性を有していること

特許法第23条第2項では、「特許権を付与する意匠は、既存の設計又は既存の設計的 特徴の組み合わせと比べて明らかな違いがあることとする。」とされている。また、創 作性の判断主体は、一般消費者であるとされる。

(4)他人の権利と抵触していないこと

特許法第23条第3項では、「特許権を付与する意匠は、他者が出願日以前に取得した 合法的権利と衝突してはならない。」とされている。

(5)法律及び公序良俗に違反し又は公共利益を害する意匠に該当しないこと

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(a) 法律違反とは、全国人民代表大会又は全国人民代表大会常務委員会が立法プロセ スに基づいて制定・公布する法律に違反することをいう。例えば、人民元札の図案 が付されたシーツの意匠は、「中国人民銀行法」に違反するため権利を付与されない (審査指南第1部分第3章6.1.1)。

(b) 公序良俗とは、公衆が普遍的に正当なものとみなし、そして受け入れられるよう な倫理・道徳観及び行動基準をいう。一定の文化的背景をベースとしたその含意は、 時間の経過及び社会の進歩に伴って変化していき、また地域によっても異なる。例 えば、暴力、虐殺又は淫猥な内容がある図面又は写真の意匠には権利が付与されな い(審査指南第1部分第3章6.1.2)。

(c) 公共利益に反するとは、意匠の実施や使用により公衆あるいは社会に危害を加え るか、若しくは国と社会における正常な秩序に影響を与えるものをいう。出願する 意匠の文字又は図案が、国の重大な政治事件、経済事件、文化事件又は宗教信仰に 係わっており、公共利益に反したり、あるいは公衆の感情若しくは民族的感情を傷 付けたり又は封建迷信を宣伝したり、良くない政治影響を引き起こす場合、そのよ うな意匠には権利が付与されない。例えば、有名な建物(例えば、天安門)及び領 袖の肖像などを内容とする意匠、中国の国旗、国章を図案の内容とする意匠には権 利が付与されない(審査指南第1部分第3章6.1.3)。

3.意匠の開示方法

3.1 提出書面などの内容、記載項目 3.1.1 提出書面

特許法第27条より、意匠出願の際には、願書3、当該意匠の図面又は写真、及び当該意 匠の簡単な説明等の書類を提出しなければならない。また、同条により、出願人が提出す る図面又は写真は保護を求める製品の意匠を鮮明に表示していなければならない。出願は 書面によるほか、電子システムを用いることも可能である。願書、図面又は写真の記載項 目の詳細は後述する。

願書、当該意匠の図面又は写真及び当該意匠の簡単な説明等の書類が要件を満たして受領 された日が出願日として認定される。願書には「製品の名称」を記載しなければばらない とされることから、物品名の記載も出願日認定要件の一つと解される4。

3.1.2 簡単な説明

出願する際には、願書、図面又は写真のほか、当該意匠の簡単な説明に係る書類を提出 しなければならない。意匠の簡単な説明では、意匠に係る製品の名称、用途及び意匠の設 計要点を明記し、かつ設計要点が最も明瞭に示されている図面あるいは写真を一枚指定し なければならない(実施細則第28条第1文)。正投影図の省略や色彩の保護を求める場合

3願書には(1)意匠の名称、(2)出願人名、(3)創作者名、(4)代理人名、(5)優先権を主張する場合は基礎出願の

出願日、出願番号、受理期間、(6)出願人又は代理人の署名又は捺印、(7)申請書類目録(8)添付書類目録などを明記 しなければならない(実施細則16条)。

4 http://www.wipo.int/edocs/mdocs/sct/en/sct_20/wipo_strad_inf_2_rev_1.pdf(最終訪問日:2013年2月20日), WIPO

(23)

は、簡単な説明中にその旨を明記する。

また、同一の製品における複数の類似意匠を一つの意匠として出願する場合、簡単な説 明の中で、そのうちの一つを基本意匠に指定しなければならない(実施細則第 28 条第 2 項)。

さらに、簡単な説明では、商業的な宣伝用語を使用したり、それを製品の性能の説明に 使ったりしてはならない(実施細則第28条第3文)。

以下は、審査指南第1部分第3章4.3で説明される簡単な説明の記載事項である。 (1)意匠に係る製品の名称

簡単な説明中における製品の名称は、願書における製品の名称と一致しなければなら ない。

(2)意匠に係わる製品の用途

製品の区分確定につながるような用途を明記する。複数の用途を持つ製品は、簡単な 説明において対象製品の複数の用途を明記する。

(3)意匠の設計要点

設計要点とは既存の意匠と区別されるような製品の形状・図案及びその組合せ、ある いは色彩と形状、図案の組合せ又は部位を指す。設計要点の記述は簡潔にすべきである。 (4)設計要点が最も明瞭に示されている一枚の図面又は写真の指定

指定された図面又は写真は、意匠公報の発行に利用される。 (5)その他

上記に加え、次のような場合は簡単な説明に明記する。

(a) 色彩について意匠を受けようとする又は図面の省略がある場合

色彩について意匠を受けようとする意匠出願は、簡単な説明にこれを記述する。意 匠出願において図面の省略がある場合、出願人は通常、対称のためや同一のために これを省略する等、図面省略の具体的な理由を明記する。明記することが困難な場 合、ある図面の省略だけを明記してもよい。例えば、大型装置に底面図がない場合、 「底面図省略」だけと記述してもよい。

(b) 1つの製品における複数項目の類似意匠について1件の意匠出願をする場合

簡単な説明において、そのうちの1項を基本意匠として指定する。 (c) 更紗や壁紙などの平面製品

必要に応じて平面製品におけるユニット図案が二方向連続又は四方向連続など限定 する境界がない状況を記述する。

(d) 細長いもの

必要に応じて細長い製品の長さについて省略の画法を採用した旨を明記する。 (e) 透明材料又は特殊な視覚的効果を有する新たな材料からなる場合

必要に応じて簡単な説明にこれを明記する。 (f) 意匠に係わる製品がセット製品に属する場合

必要に応じて各セット部品が対応する製品の名称を明記する。

(24)

要点を記載しなければならないことから、意匠権が設定され権利範囲を確定するにあたっ ては物品の機能及び用途が参酌され、「最高人民法院による専利権侵害をめぐる紛争案件の 審理における法律適用の若干問題に関する解釈(2009 年12 月28 日公布)」5 の第9条 にも「人民法院は意匠に係わる物品の用途を基に、物品の種類の同一又は類似を認定しな ければならない。物品の用途確定にあたって、意匠の簡単な説明、意匠の国際分類表、物 品の機能、および物品の販売や実際の利用状況などの要素を参酌することができる。」とあ ることからも明らかである。

担当方式審査官は、出願人が提出した出願書類が上記に反すると判断した場合は、出願 人に補正を求めるように通知する6(出願人が審査指南第1部分第1章1.序文)。出願人が 補正通知の受領日から2か月以内に応答をしない場合は当該意匠出願は却下処分とされる。

3.2 許容される意匠の表現

意匠に係る製品について、保護を求める内容に関する図面又は写真を提出しなければな らない(実施細則第27条第2文)。図面に代えて写真を提出した場合でも、別途手数料の 納付は不要である。

提出できる図面又は写真の数に制限はない。

3.3 許容される意匠の表現手法 3.3.1 意匠の表現手法

(1)立体製品の意匠の場合

物品の設計要点が6つの面に係る場合、6つの正投影図を提出しなければならない(審 査指南第1部分第3章4.2)。物品の設計要点が1つ又はいくつかの面にだけ係る場合、 少なくとも係わった面の正投影図と立体図を提出し、後述する簡単な説明において正投 影図を省いた理由を明記しなければならない。

各図が同一又は対称の場合は、どちらか一方を省略することが可能であり、簡単な説 明においてその旨を記載しなければならない。

(2)平面製品の意匠の場合

物品の設計要点が1つの面だけに係る場合、当該面の正投影図だけを提出して良い(審 査指南第1部分第3章4.2)。設計要点が2つの面に係る場合、当該2つの面の正投影図 を提出しなければならない。

(3)展開図・断面図等

形態の特定に必要な場合、展開図、断面視図、断面図、拡大図及び状態遷移図を提出 しなければならない。

(4)参考図

意匠に係わる物品の用途、使用方法又は使用する場所などを説明する参考図を提出し

5 http://www.jetro.go.jp/world/asia/cn/ip/law/pdf/interpret/20091228.pdf(最終訪問日:2013年2月26日)

(25)

ても良い。

(5)色彩の保護を求める場合

出願人が色彩の保護を求める場合、カラーの図面又は写真を提出しなければならない (実施細則第27条第1文)。色彩の保護を求める意匠出願は、図面の色がしっかりとし た着色が施され、容易に色あせしないものでなければならない(審査指南第1部分第3 章4.2)。

3.3.2 図面の名称及びその付け方 (1)6つの正投影図を提出する場合

この場合の図面の名称とは、正面図、背面図、左側面図、右側面図、平面図、底面図 をいう。その中の正面図に対応する面は、使用時において、常に消費者に向けているか、 又は製品全体の意匠を最もよく反映する面としなければならない。例えば、取手付きコ ップの正面図は取手が脇にある状態の正投影図とする。各正投影図の名称は相応した正 投影図の真下に明記しなければならない(審査指南第1部分第3章4.2.1)。

(2)セット製品の場合

セット製品には、その中の各部品の正投影図の前にアラビア数字順に番号を付けるも のとし、番号の前には「キット」という文字を書かなければならない。例えば、セット 製品の中の第4キットの正面図の場合、その名称はキット4の正面図になる(審査指南 第1部分第3章4.2.1)。

(3)類似意匠出願の場合

同じ物品の類似した意匠には、各意匠の正投影図名の前にアラビア数字順に番号を付 けるものとし、番号の前には「設計」という文字を書かなければならない。例えば、設 計1の正面図のように記載する(審査指南第1部分第3章4.2.1)。

(4)組立て製品の場合

組み立て製品とは、複数の部材を組み合わせたことで成される1つの製品をいう。組 み立て製品は① 組み立て関係がない、② 組み立て関係が唯一である、③ 組み立て関 係が唯一でないという3つの状況に分けられる(審査指南第1部分第3章4.2.1)。

② 組み立て関係が唯一である組み立て製品には、組み立てた状態の物品の正投影図を 提出しなければならない。

① 組み立て関係がない又は③ 組み立て関係が唯一でない組み立て製品には、各部材 の正投影図を提出し、各部材の正投影図の名称の前にアラビア数字順に番号を付けるも のとし、その番号の前には「部材」という文字を書かなければならない。例えば、組み 立て製品の中の3番目の部材の左側面図の名称は部材3左側面図になる。複数の状態の 遷移を有する物品の意匠には、その状態の遷移を示す正投影図の名称の後に、アラビア 数字順番号を付けなければならない。

3.3.3 製図

(26)

基準における正投影関係、線幅、及び切断マークの規定に従って、幅が均一な実線により、 意匠の形状を示すように作成しなければならない。シャドー線、指示線、点線、中心線、 寸法線、鎖線などで意匠の形状を表示してはならない。提出できる図面の大きさは、3cm

×8cm~15cm×22cmの範囲内である。2本の平行する二本の鎖線又は自然切断線により、 細長い物品の省かれる部分を示してもよい。

図面において、指示線で切断の位置と方向、拡大する部位、透明な部位などを示しても よいが、必要のない線又は表記はあってはならない。ただし、対象となる意匠以外の記載 について、対象となる意匠がうまく表現できない場合は、マネキンの映りこんだ図面で意 匠と特定することができる。

また、図面はコンピューターを含めた製図道具を使って作成してもよいが、鉛筆、クレ ヨン、ボールペンなどで書いてはならない。青写真、下書き、謄写印刷図を使ってもなら ない。コンピューターにより製図した意匠設計図は、図面の解像度が明瞭の要件を充足し なければならない。認められているデータフォーマットはJPEGであり、画像データは画

素72~300、サイズ≦150mm×220mmでなければならない。モノクロ画像、カラー画像

のいずれも認められる。

3.3.4 写真の撮影

写真は、モノクロ写真、カラー写真のいずれも認められる。1 枚の写真の大きさは通常 A4用紙以下の大きさとしなければならない。

また、審査指南第1部分第3章4.2.3より、写真の場合、次の要件を充足しなければな らない。

(a) 写真は明瞭なものでなければならない。フォーカスなどの原因で製品の意匠がはっ きりと表示されないことを避けなければならない。

(b) 写真の背景は単一なものでなければならない。当該意匠製品以外の内容が現れない ようにする。製品の意匠をはっきりと表示するように、製品と背景の明るさには適 宜な差異がなければならない。

(c) 写真の撮影は通常、正投影の規則に従うものとし、透視による変形で、物品の意匠 の表現が影響されないようにしなければならない。

(d) 写真は強い光、反射光、シャドー、写り込みなどで物品の意匠の表現が影響されな いようにしなければならない。

(e) 写真の中の物品は、通常は内容物又は背景を含めないようにしなければならないが、 内容物又は背景がなければ、物品の意匠を明瞭に表示することができない場合には、 内容物又は背景を含めることが許容される。

3.3.5 見本

(27)

担当方式審査官は、出願人が提出した出願書類が上記に反すると判断した場合は、出願 人に補正を求めるように通知する7 (出願人が審査指南第1部分第1 章1.序文)。出願人 が補正通知の受領日から2月以内に応答をしない場合は当該意匠出願は却下処分とされる。

4.意匠の表現に関する願書記載事項

4.1 記載事項全般

願書には、「意匠に係る製品の名称」のほか「出願人」「創作者」等の項目を記載する。 「意匠に係る製品の名称」は、意匠の図面又は写真に示された意匠に合致し、保護を求 める製品の意匠を正確かつ簡明に表明しなければならない(審査指南第1部分第3章4.1.1)。 一般的に、意匠に係る製品の名称は国際意匠分類表の小区分に列挙された名称に合致する ものとし、20字を超えてはならない。また、通常、以下のような記載を避けなければなら ない。

(a) 人名、地名、国名、機構の名称、商標、コード、型番を含む名称、あるいは歴史時 代で命名された製品の名称。

(b) 「文房具」、「炊事用具」、「楽器」、「建築用製品」など、概括が適当ではなく、抽象 すぎる名称。

(c) 「省ガソリンエンジン」、「人体身長を高くする機能を持つインソール」、「新型エン ジン搭載自動車」など、技術的効果、内部構造を記述する名称。

(d) 「21インチのテレビ」、「ミドルサイズ本棚」、「一対の手袋」など製品の規格、寸法、 規模、数量単位が付された名称。

(e) 外国語文字又は確定した中国語意味のない文字で付けた名称。ただし、例えば、「DVD プレーヤー」、「LED燈」、「USBハブ」など、既に周知となってかつ確定な意味を もつ文字は使用することができる。

4.2 新規性喪失の例外規定の有無

特許法第24条では、出願日前6か月以内に以下の状況のいずれかがあった場合、新規 性を喪失しないと規定されている。

(1)中国政府が主催する又は認める国際博覧会で初めて展示された場合(特許法第 24 条第1号)。

中国政府が承認した国際博覧会とは、国際博覧会条約に定められた、博覧会国際事務 局に登録した又はそれに認められた国際博覧会をいう(実施細則第30条第1項)。

(2)規定の学術会議又は技術会議上で初めて発表された場合(特許法第24条第2号)。 規定の学術会議又は技術会議とは、国務院の関係主管部門又は全国的な学術団体が組 織開催する学術会議又は技術会議をいう(実施細則第30条第1項)。

(28)

(3)他人が出願人の同意を得ずに、その内容を漏洩した場合(特許法第24条第3号)。

上記(1)(2)に該当する場合、出願人は出願時にその旨声明し、かつ出願日より起 算して2か月以内に、国際博覧会、学術会議又は技術会議の主催者が発行した、関係意匠 が既に展示され又は発表された事実、並びに展示又は発表の期日を証明する書類を提出し なければならない(実施細則第30条第3項)。

上記(3)に該当する場合、国務院特許行政部門は必要に応じて、指定期限内に証明書 類を提出するよう出願人に要求することができる(実施細則第30条第4項)。

出願人が実施細則第30条第3項の規定に基づいて声明と証明書類を提出せず又は、同 条第4項の規定に基づいて指定期限内に証明書類を提出しなかった場合、その出願には新 規喪失の例外は認められない(実施細則第30条第5項)

5.意匠の特定・認定・補正の考え方

審査指南第1部分第1章1.序文には、方式審査の範囲について以下のように規定されて いる。

特許法3条と40条の規定によると、国務院専利行政部門は意匠出願を受理・審査し、 方式審査を経て、却下理由を見つけていない場合、意匠権を付与する旨の決定を下し、相 応した意匠登録証書を発行するとともに、公告を行う。したがって、意匠出願の方式審査 は意匠出願を受理した後、意匠権を付与する前までの必要な手続である。意匠出願の方式 審査範囲は以下のとおりになる。

(1) 出願書類の形式審査は、意匠出願には特許法第27条1項に規定された出願書類を 含めるか、これらの書類は実施細則第2条、3条1項、16条、27条、28条、29条、35 条3項、51条、52条、119条、121条の規定に合致するものかということを含む。 (2) 出願書類の顕著な実質的欠陥の審査は、意匠出願は明らかに特許法5条第1 項、 25条1項(6)号に規定された状況に該当するものか、特許法第18条、19条1項の規定 に合致しないものか、明らかに特許法第2条4項、23条1項、27条2項、31条2項、33 条及び実施細則第43条1項の規定に合致しないものか、特許法9条の規定に基づいては 意匠権を取得できないかということを含む。

(3)その他の書類の形式審査は、意匠出願に関連するその他の手続と書類は、特許法第 24条、29条1項、30条及び実施細則第6条、15条3項と4項、30条、31条、32条1 項、33条、36条、42条、43条2項と3項、45条、86条、100条の規定に合致するもの かということを含む。

(4) 関連費用の審査は、意匠出願は実施細則第93条、95条、99条の規定に従い、関 連費用を納付しているかということを含む。

5.1 意匠の十分な開示要件

(29)

り、①意匠特許の出願に願書、図面又は写真、簡単な説明が欠けている場合(同条第1号)、 ②中国語を使用していない場合(同条第2号)、③実施細則第121条第1項の規定に合致 しない場合(同条第 3 号)、④願書中に出願者の氏名又は名称が欠けている、あるいは住 所が欠落している場合(同条第4号)、⑤明らかに特許法第18条又は第19条第1項の規 定に合致していない場合(同条第 5 号)、⑥特許出願の類別(発明、実用新案又は意匠) が明確でないか又は確定しがたい場合、の一に該当する場合、国務院特許行政部門は受理 せず、出願人に通知する。

5.2 意匠の認定・補正の要件 5.2.1 方式審査

中国では実体審査が行われないため、意匠全体についての審査は、担当方式審査官が審 査基準に基づいて行う。

出願書類が受理された後、方式審査において出願書類に「補正により克服できる欠陥」 が発見された出願に関し、審査官は全面審査を行い、補正通知書を発行しなければならな い。出願人が補正しても出願書類に欠陥が存在する場合、審査官は補正通知書を再び発行 する(審査指南第1部分第3章3.2)。

方式審査において、出願書類に方式によっても克服できない顕著な実質的欠陥が存在す る出願については、審査官は審査意見通知書を発行しなければならない(審査指南第1部 分第3章3.3)。

出願人は補正通知書又は審査意見通知書を受取った後に、指定された期間内に補正を行 うか、意見を陳述しなければならない(審査指南第1部分第3章3.4)。補正する場合は、 通知書に指摘された欠陥に対して行わなければならず、補正内容は出願日に提出された図 面又は写真で示される範囲を超えてはならない(審査指南第1部分第3章3.4)。

出願人が期限内に答弁しない場合、審査官は状況により、取下げとみなす通知書又はそ の他の通知書を発行しなければならない(審査指南第1部分第3章3.4)。

出願書類に顕著な実質的欠陥が存在しており、審査官が意見通知書を出した後に、出願 人が意見陳述又は補正を行っても欠陥が除去されていない場合、又は出願書類に形式上の 欠陥が存在しており、審査官が当該欠陥に対し補正通知書を2回出しており、出願人が意 見陳述又は補正を行っても欠陥が除去されていない場合、審査官は出願の却下決定を下し て良いとされている(審査指南第1部分第3章3.5)。

また、出願人は、出願日より2か月以内に、出願を自発的に補正することもできる(実 施細則第51条)。

5.2.2 補正の要件

特許法33条において、「意匠に対する特許出願書類の補正は、当初の図面又は写真で表 示した事項の範囲を超えてはならない。」と規定されている。この要件を満たす補正であれ ば、「図面」から「写真」に変更する補正、「色彩あり」から「色彩なし」に変更する補正、 これらの逆の補正、斜視図を追加する補正、その他要旨の認定に影響のない範囲における 意匠の内容の補正が可能である。

(30)

の出願書類に示された相応の意匠と比べ、異なる意匠に属することをいう(審査指南第 1 部分第3章10)。出願人による意匠専利出願書類に対する補正が元の図面又は写真に示さ れた範囲を超えたか否かを判断するときに、補正後の内容が元の図面又は写真に既に示さ れており、又は直接的かつ明確に確定できるものであれば、当該補正は当初の図面又は写 真で表示した事項の範囲内であると判断される。

5.2.3 補正がなされた場合の審査

(1)自発補正がされた場合の審査(審査指南第1部分第3章10.1)

審査官はまず補正請求の期日が出願日から2か月以内であるか否かを確認する。2か月 を超えた補正について、補正された書類が元の出願書類の欠陥を取り除き、かつ権利付与 の見通しがある場合、当該補正書類を認めてもよい。認められなかった補正書類について、 審査官は未提出とみなす通知書を発行する。

2 か月以内にされた自発的補正について、審査官は当該補正が元の図面又は写真に示さ れた範囲を超えたか否かを審査しなければならない。元の図面又は写真に示された範囲を 超えた場合、審査官は審査意見通知書を発行し、出願人に当該補正が特許法第 33 条に合 致しないことを通知しなければならない。

出願人による答弁陳述又は補正を経てもなお規定に合致しない場合、審査官は特許法第 33条と実施細則第44条2項の規定に基づき拒絶決定を下すことができる。

(2)通知書に指摘された欠陥に対する補正がされた場合の審査(審査指南第1部分第3 章10.2)

審査官は当該補正が元の図面又は写真に示された範囲を超えたか否か、また当該補正が 通知書に指摘された欠陥への補正であるか否かを審査する。

通知書に指摘された欠陥に対する補正でない内容を含む補正書類である場合、もしその 補正が当初の図面又は写真で表示した事項の範囲内であり、かつ元の出願書類にある欠陥 を取り除き、権利付与の見通しがある場合、当該補正を通知書に指摘された欠陥に対する 補正と見なすことができ、当該補正された出願書類は受け入れられる。

補正書類が元の図面又は写真に示された範囲を超える場合、審査官は審査意見通知書を 発行し、出願人に当該補正が特許法第 33 条に合致しないことを通知する。出願人による 答弁陳述又は補正を経てもなお規定に合致しない場合、審査官は特許法第 33 条と実施細 則第44条2項の規定に基づき拒絶決定を下すことができる。

5.2.4 優先権主張を伴った出願

パリ条約上の優先権主張を伴った出願の場合、出願日から3か月以内に優先権証明書を 提出しなければならない。基礎出願で「簡単な説明」を提出していない場合であっても、 中国出願において提出した「簡単な説明」が基礎出願の図面又は写真に示される範囲を超 えていない場合、優先権の主張には影響しない(実施細則第31条第4項)。

出願人は1件の意匠出願において、1つ又は複数の優先権を主張することができる(実 施細則第32条第1項、審査指南第1部分第3章5.2)。

(31)

出願と後の出願の実体的内容が同じであるかということについて審査はなされない(審査 指南第1部分第3章5.2.1で準用する審査指南第1部分第1章6.2.1.1)。

6.意匠の単一性の考え方

6.1 一出願と認められる範囲

1.2.1で述べたように、中国特許法第31条第2項より、一件の意匠出願は一つの 意匠に限られるが、例外的に、同一製品に関する2つ以上の類似意匠又は同一の分類に属 しかつ一組として販売又は使用される製品に用いられる組物の意匠は、1 件の出願とする ことができる。2つ以上の意匠を1つの出願として提出する場合は、各意匠の通し番号を それぞれの意匠製品の各図面又は写真の名称の前に表記しなければならない(実施細則35 条3項)。

なお、類似意匠でも、組物の意匠でも、各意匠あるいは各製品の意匠として一意匠とし て出願するための要件を満たさなければならないが、それぞれその他の権利付与要件も備 えなければならない。そのうちの一つの意匠あるいは一製品の意匠が権利付与要件を備え ない場合、当該意匠あるいは当該製品の意匠を削除しない限り、当該意匠出願は権利付与 要件を備えないとされる(審査指南第1部分第3章9.3)。

6.2 一意匠と認められる範囲

ナイフ、フォーク及びスプーンなどのセットもの、組み立てるとロボットになる自動車 おもちゃのような物品の一部又は全体が動くあるいは変化するものは一意匠として出願可 能である。セットものについては、出願人が自由に組み合わせて一の意匠として出願でき る8。

6.3 分割要件

1つの出願に2つ以上の意匠が含まれる場合、分割出願を行うことができる(実施細則 第42条)。分割出願は、原出願に対して意匠権を付与する旨の通知書を受領した日より2 か月の期間(即ち登録手続きの期限)の経過前までに行わなければならない(実施細則第 42条、審査指南第1部分第3章9.4.1で準用する審査指南第1部分第1章5.1.1)。出願が 既に却下され、取り下げられ又は見なし取り下げとされた場合、分割出願をすることがで きない。

また、分割出願は次の要件を満たす必要がある(審査指南第1部分第3章9.4.2)。 (a) 原出願に二つ以上の意匠が含まれる場合、分割出願は原出願のうちの一つあるい

は複数の意匠に当たるもので、かつ原出願に示された範囲を超えてはならない。 この要件を満たさない場合、審査官は審査意見通知書を発行し、出願人に補正を 通知する。期間が経過しても回答がない場合、取り下げとみなす通知書を発行する。 出願人が十分な理由もなく補正しない場合、当該分割出願に対し拒絶決定がなされ る。

(32)

(b) 原出願が製品全体の意匠である場合、その一部を分割出願として提出することが できない。

例えば、バイクの意匠に係る出願の場合、バイクの部品を分割出願として提出し てはならない。該当する場合、審査官は審査意見通知書を発行する。期間内に回答 がない場合、取り下げとみなす通知書を発行する。出願人が十分な理由もなく分割 出願としての出願にこだわる場合、当該分割出願に対し拒絶決定がなされる。

なお、分割出願は、新規出願とみなして、出願費用が徴収される(審査指南第1部分第 3章9.4.3で準用する審査指南第1部分第1章5.1.2)。

7.意匠権

7.1 意匠権の効力範囲

特許法第59条第2項より、意匠権の保護範囲は、図面又は写真が示す当該製品の意匠 を基準とし、簡単な説明は、図面又は写真が示す当該製品に係る意匠の解釈に用いること ができる。意匠権の効力は、願書に記載の物品の同一・類似物品、かつ、図面等が示す意 匠の類似範囲にまで及ぶ9。

意匠の開示内容と意匠権の効力の範囲について、図面等に開示されていない箇所があっ た場合、この箇所が意匠の全体の視覚的効果に与える影響を考察する。特に影響がない場 合は、意匠権の効力が及ぶが、大きな影響がある場合は、意匠権の効力が及ばない10。

色彩の保護を要求した意匠の場合、色彩の有無が意匠権の効力に影響を及ぼすが、色彩 の保護を要求しない場合、意匠権の効力を判断する際に色彩の有無は考慮されない11。

7.2 権利行使の制限事項

特許法第27条第2項では、出願人が提出する図面又は写真は、保護を要求する製品の 意匠を鮮明に表示していなければならないとされている。当該要件を満たさない場合は、 無効理由を有することとなる。

8.意匠公報に掲載された意匠の表現例

国務院特許行政部門は、web上で登録意匠を公開している。次のURLのホームページ の「外観設計専利」のチェックボックスにチェックし、製品の名称や番号を入れることで 登録意匠を検索することができる。

http://www.sipo.gov.cn/zljs/(最終訪問日:2013年2月20日)

9.意匠権に係る判例について

9 第III部海外アンケート調査結果による。

10第III部海外アンケート調査結果による。

(33)

意匠の明瞭性の要件を争点とした判決として次の判決がある。 (1)事案の概要

中華人民共和国北京市第一中級人民法院の行政判決

事件番号:(2007)高行終審第169号 判決日:2007年8月16日 結論:控訴棄却

控訴人(原審原告):(フランス)、卡罗公司(以下、「カルロ公司」と言う。)

被控訴人(原審被告):中華人民共和国国家知識産権局専利再審委員会

原審第三者:浙江月立電器有限公司

本件意匠:

控訴人(フランス)カルロ公司は、意匠権紛争事件に対する北京第一中級人民裁判所 (2006)一中行初審第500号の行政判決を不服とし、北京高等人民裁判所に控訴した。

(2)控訴審に至るまでの経緯 (a) 専利再審委員会における判断

カルロ公司は、2000 年 2 月 25 日に中華人民共和国国家知識産権局に申請番号

00303004.0号の「ヘアドライヤー」の意匠を出願した。2000年12月20日に中華人民

共和国国家知識産権局よりカルロ公司に意匠権が付与され、公告がなされた。

この意匠に対し、浙江月立公司は、2005年6月13日に専利再審委員会に対し、実施 細則第2条第3号の規定に基づき、本件意匠の無効審判を請求した。これと同時に対比 できる文献1、2及び添付資料6件を提出した。浙江月立公司の具体的な無効理由は、 先願の地位を有する対比文献1と2が本件意匠と近似しており特許法第23条の規定を 満たさないこと、また、本件意匠それぞれの投影図の対応関係が取れないこと及び風の 出口が閉じていることから工業的応用ができないため実施細則第2条第3号の規定12を 満たさないこと、である。

再審委員会は、2005年12月26日に本案の無効審判請求の第7712号審決(以下、第 7712号審決という。)を決定し、本案の意匠権が無効であることを宣告した。

当該審決では、次のように判断されている。

本件意匠の正面図と背面図から、ヘアドライヤーのハンドルの背面に点状の図案が分 布しているが、底面図、右側面図、立体図、及び使用状態参考図に示す対応の部位に点 状の図案がない。本件意匠の投影図の不一致によるそれぞれの投影図の対応関係がない ことから、本件意匠の保護を要求する対象は不明確である。このような状態では、本件 意匠は、工業における再現性のみならず、工業的応用にも適合しないから、実施細則第 2条第3号の規定を満たさない。意匠権は、物品の形状、図案あるいはその結合及び色 彩と形状、図案の結合を保護する。本件意匠のハンドル背面は、容易に消費者から注目

12 本判決は改正前法下におけるもので、当該法下における実施細則第2条第3項は「特許法にいう意匠とは、製品の形状、

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される部位であり、点状図案の有無はヘアドライヤーの全体の形状に影響されないが、 ハンドル背面の図案があるか否かに関わり、これにより、物品全体の外観に関連する。 たとえ、製図の間違いにより工業に応用できないことを問わなくでも、本件意匠に示す 投影図の不一致によるそれぞれの投影図の対応関係がないことから、本件意匠の保護範 囲は不明確である。6 面図中、二つの図面(正面図と背面図)に示すハンドル背面に点 状図案があることと、2 つの図面(底面図と右側面図)に示すハンドル背面に点状図案 がないことが、善意に解釈して製図の誤りとして許すとしても、ハンドル背面の点状図 案は依然として明確ではない。また、専利再審委員会も、正面図と背面図の間違いか若 しくは底面図と右側面図の間違いかにより、どれが本件意匠の間違いなのかを確信する 合理的な理由がない。言い換えれば、当該間違いにより、本件意匠の保護対象が不明確 になり、本件意匠に示す図面では本件意匠の図面に示す外観を有する物品を製造するこ とができない。したがって、カルロ公司は、当該間違いについて、本件意匠により工業 的応用ができるか否かによらず、この問題に関する主張が成り立たない。

上述の理由により、専利再審委員会は、第 7712 号審決を行い、本件意匠が無効であ ると宣告した。

(b) 北京第一中級人民裁判所における判断

カルロ公司は専利再審委員会における判断を不服として、北京第一中級人民裁判所に 提訴した。

北京第一中級人民裁判所は、次のように判示した。

実施細則第2条第3号に定めている「工業的応用」については、意匠権に係る物品の 工業における量産要件を具備することを指す。この意匠権に係る量産要件を具備する物 品は、確定性及び唯一性を有し、即ち意匠に示す写真あるいは図面に従い、確実に製造 できることである。しかし、本件意匠に用いられるそれぞれの正投影図から構成される 図面の不一致から、本件意匠に示すハンドル背面に点状図案があるか否かを何人も確認 できず、また本件意匠の図面に基づく確定、唯一の物品も製造できない。したがって、 本件意匠は、「工業的応用」に適合しないといえる。専利再審委員会の第7712号審決は、 はっきりとこの点を認識し、正確に法律条文を適用し、合法的な手続を備えたものであ る。

北京第一中級人民裁判所は、「中華人民共和国行政訴訟法」第54条第1項の規定によ り、専利再審委員会の第7712号審決を維持する判決をした。

(3)控訴審における判断

図 2  そこで、出願人は意見書において、下記のように修正した「意匠の本質的特徴」の一覧 表を提出した。     「テーブル」であって、 ・構成要素は、テーブルの上面板  及び  テーブルの脚からなり、 ・突出している長方形のテーブルの上面板と、 ・垂直方向に伸びる長方形の角柱に基づくテーブルの脚の実施であり、      「特徴点として」 、 ・平板化されたテーブルの脚と、 ・各側面に 3 本のテーブルの脚の取付けと、 ・相互に相対的に位置を変える 3 本のテーブルの脚、      を有する意匠の実施。 意

参照

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